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黒谷村 村のひと騒ぎ 麓 山の貴婦人 逃げたい心 |
禅僧 桜枝町その他 閑山 木々の精、谷の精 不連続殺人事件 暗い哉東洋よ |
黒谷村 ちくま文庫 坂口安吾全集1 初出誌:「青い馬」 発行年月:S6.5 一年の半は雪に鎖され、残りの半さえ太陽を見ることは さして屡【旧字】でないこの村落では、気候のしみが人 間の感情にもはっきり滲み出て来るのだった。夏も亦一 瞬である。あの空も、あの太陽も、又あのうらうらとし た草原も樹も。…そういう果敢無さが慌ただしい色情の 裏側に、むしろうら悲しくやるせない刻印を押している ように思われて、物の哀れとも言うべきものが、侘しく 胸に沁みて来るばかりであった。戻る |
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村のひと騒ぎ ちくま文庫 坂口安吾全集1 初出誌:「三田文学」 発行年月:S7.10 自分一人の心臓を(いや、胃袋だ!)おさえきれずにい た幾百万の(とは言え本当は人口二百三十六名である) 村人は、血走った眼に時雨の糸が殴り込むのを決して構 おうとせずに、息を詰めて知識の殿堂へ殺到した。遠い 山からそれを見ると、勤勉な蟻−−【罫線】物を考えた り声を出したりしないところの、あの怱忙な行列に酷似 していた。戻る | |
麓 ちくま文庫 坂口安吾全集1 初出誌:「櫻」 発行年月:S8.5〜6 黄昏が帰滅へ誘う遥かな言葉。茫々たる愁いが流れる。 愁いは枯れ果てた高原を舞いめぐり、静かな興奮となっ て馬耳の胸にひとひらの冷めたい血液を落した。犬が夕 靄のなかを走っている。そして、夜が落ちた。戻る |
大棟山美術館の山門 |
山の貴婦人 ちくま文庫 坂口安吾全集14 初出誌:「帝国大学新聞」 発行年月:S8.7/10 私は愛きょうのあるこの村と、愛きょうのある人々に甚 大の好意を寄せていたので、もっとも素ぼくな、一種の 宗教的衝動に基いてお辞儀に及んだと想定していただき たい。にやにやするのは私の悪癖で、神様の前でも、つ い笑いだしてしまうのである。戻る | |
逃げたい心 ちくま文庫 坂口安吾全集1 初出誌:「文芸春秋」 発行年月:S10.8 私は、私は、あの、うちへ帰りたくないのです。…私は 家族を愛しています。激しく愛していますけど、なぜ私 達は愛する人達のところへ帰らなければならないのでし ょう?私は怖ろしいのです。それに、せつないのです。 戻る | |
安吾碑 |
禅僧 ちくま文庫 坂口安吾全集3 初出誌:「若草」 発行年月:S10.11 禅僧は同じ村のお綱という若い農婦に惚れた。この農婦 が普通の女ではなかった。野生そのままの女であった。 戻る |
桜枝町その他 ちくま文庫 坂口安吾全集14 初出誌:「文芸通信」 発行年月:S10.11 事実を突きとめたら莫迦【旧字】らしくなって、結局小 説には嘘を書いた。事実を知っていると嘘を書くにも気 が楽だ。それだけの功徳はある。戻る | |
安吾碑 |
閑山 ちくま文庫 坂口安吾全集3 初出誌:「文体」 発行年月:S13.12 やがて先ほどの手を再び差しのべる者があり、声が言う には「和尚さま。誤って有徳の沙門を嬲り、お書きなさ いました文字の重さに、帰る道が歩けませぬ。不愍と思 い、文字を落して下さりませ」見れば一匹の狸であった。 戻る |
木々の精、谷の精 ちくま文庫 坂口安吾全集3 初出誌:「文芸」 発行年月:S14.3 その水の厚みの深い色をみては、主だとか妖精だとか思 いつかずにいられないのが自然であるし、掌にすくった 水まで、同じ厚味のねっとりした深い碧い色のように思 いたくなる。水の上を歩くことが出来そうな、厚味の深 い澱んだ色の絨毯なのだった。戻る | |
不連続殺人事件 ちくま文庫 坂口安吾全集11 初出誌:「日本小説」 発行年月:S22.8〜S23.8 附記 不連続殺人事件という題名が色々問題となり、 要するに不連続というのだから、事件ごとに犯人が違っ ているんだろう、という名探偵がしきりに登場している 由、先ずヨミスギ掲示が拙宅へ現れて、あの題名が手掛 りさとカンのいいところを見せて行きましたが、どうや らヨミカタが足らないようです。戻る | |
暗い哉東洋よ ちくま文庫 坂口安吾全集16 初出誌:「オール読物」 発行年月:S26.10 私の姪が自殺したことがあった。年は二十。自宅の前の 堀へ身を投げて死んだ。戻る |
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