松之山編.PDF


「安吾の会」で選んだ、松之山町を舞台とする
作品の<みどころ>ポイント紹介

*株式会社筑摩書房「ちくま文庫」【坂口安吾全集全18巻】をテキストとし、作品名と紹介文を掲載。
ただし、初出誌については、安吾の会発行の「安吾探索ノート」第3号、第5号から抜粋しました。



黒谷村
村のひと騒ぎ

山の貴婦人
逃げたい心
禅僧
桜枝町その他
閑山
木々の精、谷の精
不連続殺人事件
暗い哉東洋よ


黒谷村
 ちくま文庫 坂口安吾全集1	
 初出誌:「青い馬」
 発行年月:S6.5	
一年の半は雪に鎖され、残りの半さえ太陽を見ることは
さして屡【旧字】でないこの村落では、気候のしみが人
間の感情にもはっきり滲み出て来るのだった。夏も亦一
瞬である。あの空も、あの太陽も、又あのうらうらとし
た草原も樹も。…そういう果敢無さが慌ただしい色情の
裏側に、むしろうら悲しくやるせない刻印を押している
ように思われて、物の哀れとも言うべきものが、侘しく
胸に沁みて来るばかりであった。戻る
村のひと騒ぎ
 ちくま文庫 坂口安吾全集1
 初出誌:「三田文学」
 発行年月:S7.10
自分一人の心臓を(いや、胃袋だ!)おさえきれずにい
た幾百万の(とは言え本当は人口二百三十六名である)
村人は、血走った眼に時雨の糸が殴り込むのを決して構
おうとせずに、息を詰めて知識の殿堂へ殺到した。遠い
山からそれを見ると、勤勉な蟻−−【罫線】物を考えた
り声を出したりしないところの、あの怱忙な行列に酷似
していた。戻る

 ちくま文庫 坂口安吾全集1
 初出誌:「櫻」
 発行年月:S8.5〜6
黄昏が帰滅へ誘う遥かな言葉。茫々たる愁いが流れる。
愁いは枯れ果てた高原を舞いめぐり、静かな興奮となっ
て馬耳の胸にひとひらの冷めたい血液を落した。犬が夕
靄のなかを走っている。そして、夜が落ちた。戻る

大棟山美術館の山門
山の貴婦人
 ちくま文庫 坂口安吾全集14	
 初出誌:「帝国大学新聞」
 発行年月:S8.7/10
私は愛きょうのあるこの村と、愛きょうのある人々に甚
大の好意を寄せていたので、もっとも素ぼくな、一種の
宗教的衝動に基いてお辞儀に及んだと想定していただき
たい。にやにやするのは私の悪癖で、神様の前でも、つ
い笑いだしてしまうのである。戻る
逃げたい心
 ちくま文庫 坂口安吾全集1
 初出誌:「文芸春秋」
 発行年月:S10.8
私は、私は、あの、うちへ帰りたくないのです。…私は
家族を愛しています。激しく愛していますけど、なぜ私
達は愛する人達のところへ帰らなければならないのでし
ょう?私は怖ろしいのです。それに、せつないのです。
戻る

安吾碑
禅僧	
 ちくま文庫 坂口安吾全集3
 初出誌:「若草」
 発行年月:S10.11
禅僧は同じ村のお綱という若い農婦に惚れた。この農婦
が普通の女ではなかった。野生そのままの女であった。
戻る
桜枝町その他	
 ちくま文庫 坂口安吾全集14	
 初出誌:「文芸通信」
 発行年月:S10.11
事実を突きとめたら莫迦【旧字】らしくなって、結局小
説には嘘を書いた。事実を知っていると嘘を書くにも気
が楽だ。それだけの功徳はある。戻る

安吾碑
閑山	
 ちくま文庫 坂口安吾全集3
 初出誌:「文体」
 発行年月:S13.12
やがて先ほどの手を再び差しのべる者があり、声が言う
には「和尚さま。誤って有徳の沙門を嬲り、お書きなさ
いました文字の重さに、帰る道が歩けませぬ。不愍と思
い、文字を落して下さりませ」見れば一匹の狸であった。
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木々の精、谷の精
 ちくま文庫 坂口安吾全集3
 初出誌:「文芸」
 発行年月:S14.3
その水の厚みの深い色をみては、主だとか妖精だとか思
いつかずにいられないのが自然であるし、掌にすくった
水まで、同じ厚味のねっとりした深い碧い色のように思
いたくなる。水の上を歩くことが出来そうな、厚味の深
い澱んだ色の絨毯なのだった。戻る
不連続殺人事件	
 ちくま文庫 坂口安吾全集11	
 初出誌:「日本小説」
 発行年月:S22.8〜S23.8
附記 不連続殺人事件という題名が色々問題となり、
要するに不連続というのだから、事件ごとに犯人が違っ
ているんだろう、という名探偵がしきりに登場している
由、先ずヨミスギ掲示が拙宅へ現れて、あの題名が手掛
りさとカンのいいところを見せて行きましたが、どうや
らヨミカタが足らないようです。戻る
暗い哉東洋よ	
 ちくま文庫 坂口安吾全集16	
 初出誌:「オール読物」
 発行年月:S26.10	
私の姪が自殺したことがあった。年は二十。自宅の前の
堀へ身を投げて死んだ。戻る



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